”上顎の総入れ歯が何回も割れてしまって困る”
60代後半 男性
”上の入れ歯で苦労しているのだが、通っていたクリニックが閉院になった” とのことで当院に来院されました。
診査をしたところ、下の前歯がしっかり残っているため、かみしめる力がかなり強く、入れ歯も安定していない。骨の量はしっかりしていたため、インプラントでの固定式のブリッジ(オールオンX的)を提案したところ、積極的にすすめていきたいとのこと。 この方法は、インプラントがしっかり骨に固定できる等の条件さえ揃えば、インプラント埋入手術と同時に固定式の仮歯がはいるのが特徴である。
下の前歯全体が突出していたので、上下のかみ合わせを調整することにより、見た目の改善をこころみます。
長年、不適合な入れ歯を使用していたため、上の入れ歯だけでなく、下の前歯全体の配列が乱れていました。 下の前歯のみが残存しているかたの典型的な見た目です。 この場合は上下同時にかみ合わせを調整すると、かみ合わせだけでなく、見た目も改善できることがあります。(フルマウス リハビリテーション)
まずは仮歯でかみ合わせと見た目を整えます
咬合器というかみ合わせをチェックできる器具を用いて慎重にすすめます。
上顎は新しい仮歯としての総入れ歯を入れました。 これが即時荷重のインプラントブリッジの青写真になります。
最終的にどのような見た目にしたらよいかの青写真として、仮歯を製作しました。見た目だけでなく、機能面もチェックできます。
上顎はオールオンXタイプの即時荷重のインプラントブリッジ予定です
CYスキャンにて骨の量を確認したところ、 インプラントを4本入れる骨量は十分ありました。
4本のインプラント埋入と同日に仮歯を固定して、総入れ歯とはおさらばしました。
インプラント4本を埋入して、しっかりと固定ができたため、その日のうちに固定式の仮歯をつけて帰宅していただきました。 この日からは、やわらかいものを2か月ほど食べていただくことになります。 しっかりと固定できない場合は、再び入れ歯をして帰っていただきます。
術中術直後の考えられる偶発症:歯肉、顔の腫脹、術後出血、痛み インプラント体の固定不足、 新しい仮歯への変換による発音不慣れ等 等
仮歯で2か月以上暮らします
仮歯をしている期間に、前歯の形を修正して審美状態を確認したり、歯茎とのすきまの形を整え、その部分の清掃方法を習得していきます。 画像は、スーパーフロスを通して、ブリッジの下面を清掃しているところです。
インプラントと骨が結合しようとしている(osseointegrationといいます)この期間中は、 やわらかいものを食べていただきます。 気を付けていただきたい重要ポイントです。 硬いものを食べてしまったりしてインプラントが揺れてしまい骨と結合しなかった場合は、埋入からやり直しになる場合もあります。
チタンベースのジルコニアの上部構造です
神作歯科医院では、噛むための強度を保ち、破折を予防するために、内部構造はチタン等のメタルで連結し、上部にジルコニアクラウンを貼り付ける方法、 あるいはジルコニアですべて製作する製法のどちらかを特に推薦しています。 簡易的でリーズナブルなアクリリックレジン製の上部構造ですと、破折や摩耗が結構な確率で起こりますため定期的な修理が必要になることが多いです。
適合のよい術者可撤式のオールオンX的即時荷重のインプラントブリッジが入りました。
チタンフレームの入ったジルコニアクラウンのため、強度は十分あるため、これからは、やわらかいものに限定せずお食事していただきます。
一年に一回はレントゲン撮影して異常がないかの確認をしていきます。 当院でのクリーニングは、ご自身での歯磨きの状態がよければ、3~4か月に一回を推奨いたします。 歯磨きがむつかしい場合は、もう少し早いサイクルでメインテナンス/クリーニングを行いましょう。
インプラント埋入手術前の準備段階( プロビジョナル/仮歯作製/CT画像診断の期間 ) 約2か月
インプラント埋入手術から上部構造終了までの治療期間 約6か月
治療費 上顎 インプラント4本(オールオン即時荷重手術 + チタンフレームのジルコニア冠 3,100,000円(税別)
考えられる偶発症
仮歯の破折、インプラントの動揺~脱落、インプラント周囲炎、 上部構造やアバットメントの緩みや破折(スクリュールースニング)等
フルアーチ(全顎) インプラントの仮歯法まとめ
無歯顎においてインプラント固定式になる場合の インプラント埋入術後の仮歯の方法
1 取り外し式の義歯(入れ歯)を使用する方法
通常の入れ歯で一定期間過ごしていただく方法です 一番簡便ですが、着脱式です インプラント埋入時にインプラントの固定が十分でない場合は、この方法を用います
2 インプラントを利用した即時負荷法 (オールオン4等のオールオンX的方法を含む)
インプラントを埋入してすぐに固定式(術者可撤式)の仮歯を装着できますため、 一日で劇的な変化が得られます。ただし術後はしばらくやわらかいもので食事を続ける必要あり(食事制限)
3 順次的抜歯法・シリアルエキストラクション法(Sequential /serial extraction protocol)
傷んではいるが最終的には抜く予定の残存歯をまず利用して固定式の仮歯を装着する方法。 インプラントの埋入手術が一回でなく、複数回になるため、最終的な上物(ジルコニア等)が入るまでの期間は延びますが、食事制限はとくになし
4 ミニインプラントを使用する方法
通常より細いインプラントを用います 仮歯使用の終了後はミニインプラントの撤去が必要になります 骨量が十分でないと活用しにくい